「あ、あた~!!!!」

日差しが照りつける夏の日、男の叫び声が村中に響き渡りました。

それからしばらくして 女性の甲高い叫び声も聞こえてきました。

「た、大変だ!おやっさんが足を切っちまった!」

若い男がそういって畑から駆け出してきました。

見ると、おやっさんと呼ばれた男の足が 今にもちぎれてしまいそうなほど深く切れてしまっていました。

「手が滑っちまった・・」と斧を指して男が言いました。

若い男に連れられてきた医者によって なんとか足はつなぎとめたものの、

歩けるようになるには、1000日くらいは必要だろうと言われてしまいました。

足の痛みと医者の言葉とで 男はどんどんと気が滅入ってしまいました。

その頃、若い男は 隣の村で 病弱な子どもが不思議に元気を取り戻した話を耳にしました。

金の雫の祠のことを知ったのでした。

若い男は おやっさんには黙って 金の雫の祠がある村へ駆け出しました。

若い男の足のはやいこと、1日半で 祠へとたどり着きました。

走り続けていた足を止めて祠で手を合わせると、大量の汗が身体から吹き出しました。

男が手を合わせてる頃、やはり おやっさんのもとには不思議なことが起こっていました。

毎日話相手にやってくる若い男が 昨日も今日もやって来ず、「恩知らずめ」といいながら

退屈そうに布団の上に寝っ転がり、ふと寝元にある水を飲もうと口を開いた瞬間、

ポツポツっ トトっ

変わった音がしたかと思うと、水が金色の雫に変わり、男は飲み切ってしまいました。

「ん?」と 少し違和感を感じながらも、男は気づかず また布団に入ってガーガー眠りにつきました。

いつの間にかぐっすり眠ってしまっていたようで、目が覚めると朝になっていました。

「おやっさん、朝早くから失礼しやす」と、ちょうど若い男が家にやってきたところのようでした。

「おお」と言いながら男が身体を起こして、驚きました。

何か 昨日とはまった違う足の状態になっていることを感じて 包帯をとってみると

傷跡のあたりがつるんと綺麗になっていて、心なしか 感覚が元に戻っているように感じました。

男に話すと、若い男は涙を流して 遠い村の祠の話をしました。

この日を境に、おやっさんは医者が目を見張るほど みるみる治っていき、

ついには 3ヶ月後に歩けるようになったのでした。

驚いたのは、村のみんなです。

きっとおやっさんは片足をなくしてしまったんだろう、と思っていたのに

そのおやっさんが 畑で元気に冬超えの支度をしているのですから。

こうして 金の雫の祠の噂は またさらに広がって行ったのでした。

神のきのこの物語

自然の恵みが与えた奇跡
長寿の町のジャングルの奥地に住む変わり者のオリスと海を越えてきてやってきた青年からはじまる「神のきのこ」の不思議なお話しです
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